2012-05-05

登山のスタイルで思うこと

5月連休も後半は天候が悪く,北アルプスで遭難による死亡事故が発生しました.
ご冥福をお祈りいたします.

私も,連休前半を利用して燕岳に登りましたが,悩ましいというか,これも時代なのかと思うことがありました.

まず,みなさん良い道具をお持ちです.
二昔前,私が山を始めた頃,諸先輩から
「今の奴らはいい.ゴアテックスに軽量素材のザックにテント,登攀具も色々あって羨ましい」
と言われました.
諸先輩たちが山に登っていた頃は,カッパやヤッケはゴム引きで,動けば直ぐに汗でグッショリ濡れてしまいます.
このため,肌着やシャツなど全てウール素材の物でした.

今は,透湿素材や保温材などが安く手に入るようになり,装備も軽くすることが出来ます.
ですが,今回山を登ってみて,道具を使えていない人が多いことに気が付きました.

まず,雪が出ると直ぐにアイゼンを履きます.このため,キックステップという歩き方が身につかず,少し厳しい(斜度がきつい,氷斜面など)での滑落事故につながります.
実際,下りのキックステップが出来ず,コケている人が多かったと思います.
そもそも,アイゼンを付けずに登降している人は皆無でした.
いくら初級ルートとはいえ,ひどい状況だな,と思わざるをえませんでした.
#ただ下る若者が,トレースを外してグリセードをしていたのは感心でした.
#多くの人は,アイゼンでキックステップを崩して下っていましたから.

またピッケルを,まるでアクセサリのように付けている人も少なくありませんでした.
ピッケルバンドをケチったのか,細引き(おそらく6mm程度のロープ)でザックのウェストベルトにつないでいる人や,ザックにピッケルをぶら下げるようにしている(ピックが自分のお尻に向いている)人などなど.
ピッケルの使い方も十分に教えずに売る店にも問題がありますが,使い方も勉強せずに春山に入る登山者にも問題があります.
もし,急斜面で滑落すれば,どうやって滑落停止するのでしょうか.滑って尻もちをついたら,ピックが自分に刺さりますよ.

除雪され,手軽に山に入れることもありますが,2,000mを越える,ましてや北アルプスに至っては,まだ冬山装備が必要です.
にも関わらず,手軽に入山するカメラマンも多いのも気になりました.
山の知識もなく,山小屋頼りなのは自覚がないと事故につながります.
白馬岳の事故も,服装が夏山に近く,カッパも薄かったとか.
私は厳冬期でもヤッケは使っていませんが,厚手のカッパを使っています(裏地の有無の違いだけ).
#もっとも,冬の間は寒さの耐性をつける努力をしています.

また,ロープが張られ,植生保護をしている区域に踏み込んだ足跡も何箇所かありました.
コマクサなど,砂礫に根をはる植物は,踏んでしまうと二度と芽を出しません.
春先,雪が溶けて知らずに踏み込み,全滅させたということもよく聞きます.
裏磐梯のある川で,カメラマンが踏み込んでしまい,昔の花風景はもう見られない,と観光協会で聞きました.
鉢伏山でも,そういうカメラマンや観光登山客を見かけました.
そういう事態を防ぐために,小屋などのスタッフは懸命に自然を守っているのですが,たった一人の行為で全てが無になってしまうのです.

放射能については,ルール(国の基準)よりもマナー(店の基準)を優先するのに,自然保護になるとマナーよりもルールを優先し,かつルールすら守らない人が多いのは嘆かわしいことです.